「見る」を育む空間
センター北駅前に位置するこの建物は、ガラスに囲まれ、街へ向かって大きく開かれていた。一方で、眼科には検査や診察のために光を遮る環境が求められる。そこで、この開放性と遮光性という相反する条件に対して、ガラスの内側にもうひとつの外観を立ち上げた。
来院者の多くが過ごす待合スペースと、診察室や暗室など光の制御を必要とする諸室とのあいだに、緩やかな円弧をもつタイル壁を挿入した。この壁は、来訪者の視線を最初に受け止めながら、南北に長く広がるクリニックにおいて、人の流れを自然に導いていく。また、開口を2枚1組にまとめることで、病院によくある短冊状の扉の反復をなくし、壁の連なりを際立たせている。
このタイル壁には2種類のタイルを採用した。釉薬の揺らぎによって一枚ごとに異なる表情を見せる縦長のタイルは、壁の円弧に応答しながら連続的に沿い、遠景では彩りあるひとつの風景として現れる。対照的に、大判タイルは、静かな面を連続させ、柔らかな色彩によって穏やかな空間を形成している。間接照明の光がこれらの壁をなぞることで、その輪郭を浮かび上がらせ、閉院後も駅前に開かれた印象を保ち続ける。
タイルの表面には、雲の流れや街の木漏れ日がほのかに映り、駅前の風景を取り込み続ける。光を遮るために設けた壁は、風景の境界として光を映す壁となる。内装でありながら、もうひとつの外観としてふるまうその壁は、「見る」という行為を診療の場から街の風景へと開いていく。
名 称:センター北しみずアイクリニック
所 在:神奈川県横浜市都筑区中川中央 グランドメゾンセンター北2階
建物情報:地上10階建、地下1階建、SRC造、2005年5月
用 途:眼科クリニック(無床)
工事面積:384.43㎡(116.3坪)
竣 工:2026年3月