ダイニングテーブルをカット台に
プライベートヘアサロンは、他人を気にせずに美容師の施術を受けられる魅力がある。一方で、その距離の近さが、かえって気負いを生む可能性もある。
1987年に築造された、三角形平面が特徴の雑居ビル5階のワンフロアは、かつてオフィスとして使用されていた。3つの大きな窓と低い天井をもつ空間は、明るく開放的でありながら、どこか住居のような空気を備えていた。
友人の家を訪ねるように、気兼ねなく過ごす空間を目指して、カット台として複数の椅子を囲むダイニングテーブルを採用した。その広い天板は、施術の場であると同時に、飲み物や菓子、ヘアケア用品が並び、会話が広がる場ともなる。
ヘアカットの大きな鏡は、施術器具というより、テーブルに置かれた家具のような存在となるように、可動式の置き鏡とした。小さな台座内部には、ウェイトを吊り下げ、重心を下げることで転倒を防ぐ仕掛けとしている。容易に移動できる操作性と、テーブル上の余白を両立させるディテールとした。
ダイニングテーブルという日常的な家具を中心に据えることで、鏡に向かうだけではない、多様な過ごし方が生まれている。施術のそばで、家族や友人がテーブルを囲み、子どもが宿題や動画を見ながら待つなど、日常の風景に髪を整える時間が重なっていく。

所  在:東京都渋谷区東 某雑居ビル5階
建物情報:地上7階建、SRC造、1987年1月
用  途:美容院
工事面積:40.56㎡(12.3坪)
竣  工:2024年1月